2021/11/03
★楽譜のある音楽と、楽譜のない音楽
思い出すのは、インドネシアのバリ
島に残る、ガムラン音楽の師匠に
弟子入りした日本人の話し。
音楽を楽譜にするようにしたの
は、音楽が複雑化したのと、記憶
や伝達に便利だからだろう。
ガムラン音楽は、打楽器と歌に
よる音楽で、楽譜はなく、師匠
から弟子へとすべて口伝えで
ある。
西洋クラシック音楽は、数百年前
に、作家と演者が別れて、楽譜で
伝えるようになった。150年前に
それを輸入した日本は、その文化
を受け入れて、オケや吹奏楽では、
読譜力のある人が増えるわけだ。
文明のおかげで、車、電車、エレベー
ター、エスカレーターと便利になれば
なるほど、人間の筋肉は衰える。
ガムラン音楽に弟子入りした日本人
の本が面白かったのだが、村対抗の
音楽コンクールがあり、敵の村に忍び
込んで、練習を外から聞き、今やって
いるリズムパターンを聞いて覚えて、
戻り、その対抗策を考えてコンクール
に臨むというものだった。
僕は、長年、ジャズ音楽を研究して自分
でも演奏して、生徒に教えるのにやはり
楽譜を使ってきた。楽譜はとても便利な
ものだけど、逆に、楽譜さえ読めれば、
その音(音高)を認識していなくても、コード
や調性がさっぱりわからなくても、目と指
のサイクルが回ればそれらしくできてしまう
ところが、やはり諸刃の刃であろう。
僕も正直に言うと、皆さんに散々騙されて
きたのだ。素晴らしい僕の作った書きソロ、
譜面に書かれたジャズソロを、暗譜で朗々
と吹いて、発表会で万雷の拍手で迎えら
れた生徒さんに、1か月後同じ音楽を再現
してほしいと頼むと、記憶していないという。
逆に、どうしたらそのように記憶できるのか
を聞いてみたい。
我々ジャズ屋は、音楽を、まず何調かを
認識、その調の中のドレミでどの音かを
認識し、歌い、次にコードを聞き、味わい、
認識する。僕は移動度なので、コードは
番号で認識するのだ。
youtubeにも、有名プレーヤーのコピーを
正確に吹いてそれをアップしている人も
多い。確かに、練習の一過程としてはよい
だろう。
でもやはりそれは、書かれた音を再現して
いる、再現芸術であり、ある意味クラシック
プレーヤーと同じ仕事だ。決して否定する
わけではないが、即興演奏のスリルは
無くなってしまうのではないだろうか?
練習の一過程として、演者の気持ちを跡を
たどることで理解研究できるだろう。でも即興
の面白いところは、あるフレーズを考えて、
それを実行している間に、同時に次の手を
考えて、それを繰り出していくところなので
ある。
訓練があるポイントを超えると、自分の
演奏より、早く考える(思い出す)ことが
できるので、いくらでも数珠つなぎに
フレーズをつなげて演奏していくことが
できるようになるのである。
読譜、初見力の強い人が、初めての楽譜
でも、ミス無く演奏できるのと、双璧の
能力かもしれない。
世の中には、それにも増してすごい能力
の人もいる。
1時間分のピアノコンチェルトを完全
に暗記して、芸術的に弾けるコンサート
ピアニスト、多くのシンフォニーを完全
に暗記して、数十人の音をすべて記憶
して、統率して表現する指揮者。カラヤン、
バーンスタイン、小澤征爾など。
湯水のごとくに、名曲を一生の間生み
出し続ける、作曲家などなど。ガーシュイン
や、スティービーワンダー、プリンスなどの
才能は信じられない。
日本人でも、若くして、作曲の才能、ピアノ
を弾く能力、歌を歌う能力、恵まれた見た
目などを持って登場する若者もいる。
人の才能をうらやんでもしょうがない。上に
は上があり、下には下がある。いやいや、
上下はなく、その人でなくてはできない
何かを皆持っていると信じる。
この世に生まれたのは、観光に来たと思
って、自分の持てる力で、やりたいことを
やって、存分にこの世でないとできない
ことを経験してうちに帰ることにしよう笑。
自分の持てる力って、思い込んでいる以上
にあるものだ。それを発見する毎日が
楽しい。
菊地康正の、On line Jazz collage vol.19
ラテンジャズは楽しい!Mambo inn/KOSEの
フルート音つくりをアップしました。
楽しいマンボのリズムでノリノリのフルートを
お楽しみください。